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東京にある女性のためのDV相談や支援相談。ドメスティックバイオレンス(家庭内暴力)・被害を受けた女性と子どもの支援活動をしています。

DVとは

15. 魂のバトン 

2月始めにひらかれた野本さんの回復祝いの会で、お元気になられた野本さんにお会いしました。しばらくは御自宅で休養なさるとのこと、お体を大切にのんびりと過ごしてください。

私が始めて野本さんにお会いしてからもう11年。子育てをしていた私には、あっという間の時間でしたが、今回の野本さんの病気をきっかけにあらためて振り返ってみる時間がもてました。野本さんにはバタードウーマンのミーティングや別居後の生活面や離婚調停時の弁護士捜しなどでお世話になりました。

始めに今回の病気のことを聞いた時はただびっくりして呆然としてしまいましたが、落ち着いてくると自分の心の中にいままでになかった温かいものが存在しているのに気がつきました。この10年の間にたくさんの人と出会いたくさんのものを受け取っていた結果おとずれた心の変化でした。
   結婚を決めた20代後半のころを振り返ると、働き出してから10年近くが過ぎ仕事場でも責任ある役について、一人暮らしも6年を過ぎ経済的にも完全に親から自立していたのに、どこか自分に自信が持てず心の中心にぽっかりと穴が開いているような感じがなくならないで苦しんでいました。

そんなときに元の夫と出会い「君はすごい人なんだよ」というようなことを言われ、この人が認めてくれるのなら自分は生きていてもいいのかもしれないと思え、ちょうど自分の欠けているところにパズルピースがはまったような感じで、不安定だった自分の中心が満たされたような感じがしました。そして当時のこっていた摂食障害がおさまったことでこの人は運命の人だと思ってしまい結婚。

その後結婚生活がうまくいかなくなり別居した時にまたあの心の中心にぽっかりと穴の開いたような感覚が戻ってきて、結婚して幸せになることが唯一人生をリセットできるチャンスだと思っていた私には、人生がもうおわってしまって何も残っていないような感じがして、子どもがいなかったら生きていけなかったくらい人生に絶望していた。

苦しくてそれでも生きていかなければいけないと必死の思いでいまのクリニックに通っていたころ、自分のなかのこの空洞はもう一生埋まらないのだろうと思っていた。ただ治療を受けることで苦しくてもなんとかその苦しみを抱えたままでも一人で生きていけるようになるのだろうと。

そんな私が娘に何を伝えていけるのだろう。こんな私が育てて本当に子どもは幸せになれるのか?自分と同じような思いを子どもにさせるだけなのかもしれないとずいぶん不安に思っていた。

今までならそんな不安な気持ちを誰にもうちあけずに一人で押し殺して、何にも気にしていませんしっかりしているから私は大丈夫ですという顔をして生きてきた。そんな私に初めて話をする場所を与えてくれたのがいまのクリニックだった。 生まれてはじめて困ったことや不安なことは、正直に話して相談にのってもらいながら解決していく体験をした。

そうして気がついたら11年の時間が過ぎ、自分の心の中を見直した時にあれだけ大きかった心の穴がなくなっていた。その代わりに何か温かくどっしりしたものでみたされてもう誰かに何かを埋めてもらわなくても大丈夫と思えるようになっている。

この11年で出会ったたくさんの人から親からもらえなかった大切なものを確かに受け取りなおすことができたのだと思う。それはたとえいつもその人に会うことができなくなってしまったとしても、確かに心の中に受け継がれ私自身が生きている限りなくなることの無い温かいものだ。私の生きていく中心を支えてくれる大きな力だ。

これは人が人を育てていく時に伝えていく大切な心のバトンだと思う。今子どもを育てている私にもやっと自分の中に確かなものを感じることができるようになった。いつか子どもが私から離れた時に、自分の中に確かなものを感じてくれるといいなと思う。

私が人生の中で出会ったたくさんの人たちから受け取ってきたたくさんの温かい魂のバトンを、子どもにも渡せていけたらいいなと思う。

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